2016.11.18更新
巨細胞性動脈炎(GCA)の患者において「Actemra/RoActemra」(一般名:tocilizumab)を評価した第3相臨床試験「GiACTA試験」(NCT01791153)で、良好な成績が得られたことを公表した。なお、この結果は11月13日に行われた米国リウマチ学会(ACR/ARHP)の年次総会で発表された。
GiACTA試験は、GCAに対する新たな治療薬としてActemra/RoActemraの有効性と安全性を検証した二重盲検無作為化第3相国際共同試験。GCAに対してこれまでに実施された臨床試験では最大規模かつ盲検、複数の投与量および投与期間のステロイドレジメンを採用した初めての臨床試験だ。14か国、76施設において251人の患者を対象に実施された多施設共同試験で、試験の主要および副次的評価項目は52週時に評価された。
主要評価項目は、1年経過時点で持続的寛解を達成する患者の割合。Actemra/RoActemra投与群では、最初の6か月間はステロイドを漸減しながらActemra/RoActemraを併用した。対象となるステロイド単独投与群では、6か月間のステロイド漸減投与のみが行われた。その結果、ステロイド単独投与群と比較して、Actemra/RoActemra投与群は、持続的寛解を達成する患者の割合が統計学的に有意に増加(Actemra/RoActemra投与群56%[毎週投与:p<0.0001]、53.1%[2週間毎に投与:p<0.0001]、6か月間のステロイド漸減投与のみの群では14%)。
また、副次的評価項目においても、6か月間のステロイド漸減投与下におけるActemra/RoActemra投与群では、1年経過時点で持続的寛解を達成する患者の割合を統計学的に有意に増加させたとしている(Actemra/RoActemra投与群56%[毎週投与:p<0.0001]、53.1%[2週間毎に投与:p=0.0002]、12か月間のステロイド漸減投与のみの群では17.6%)。
GiACTA試験は現在、104週のオープンラベルの継続試験を実施中。米国食品医薬品局(FDA)はGiACTA試験の成績に基づき、GCAを適応症として開発中のActemra/RoActemraを画期的治療薬(Breakthrough Therapy)に指定した。なお、Actemra/RoActemraは、日本において「アクテムラ(R)皮下注162mgシリンジ、同オートインジェクター」の販売名で、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の効能・効果で承認されている。今後の展開が期待される。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2016.10.05更新
大隅東工大栄誉教授のノーベル賞受賞を受けて、医療分野の研究開発とその環境整備を支援する「日本医療研究開発機構(AMED)」は、環境整備の一環として、希少疾患治療薬の開発を支援する事業を行います。開発費用の一部を補助するもので、製薬企業の希少疾患治療薬への参入を促すねらいもあります。昨年度の公募では全身性アミロイドーシスや膿疱性乾癬といった疾患の治療薬候補へ、今年度は脊髄損傷急性期治療薬などへの支援が決定しました。関節リウマチなどに続発する続発性アミロイド―シスについても研究を拡大する予定です。
希少疾患治療薬を開発する場合、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性に基づいて厚生労働大臣の指定(希少疾病用医薬品)を受けると、審査期間の短縮、助成金の交付、研究開発の指導・助言などの支援が受けられます。従来はコスパやマーケットの規模がネックとなりなかなか進みませんでした。PMDAの認可も遅れがちで、ドラッグラグがありました。
この制度では、企業から希少疾患の治療薬候補を公募し、対象患者数や医療上の必要性、開発の可能性、保健医療への貢献度、研究開発計画などを審査した上で、臨床試験の費用、治験薬製造費などについて年間5000万円を上限として3年間にわたり補助があるようです。当該疾患の患者さんにとっては吉報です。昨年度採択された課題は、全身性アミロイドーシス、膿疱性乾癬、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、悪性神経膠腫などに対する治療薬です。
今後もこのような動きが加速されることを祈念してやみません。創薬はあくまでも基礎研究の副産物ですが、そういう理念をもつことは重要です。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2016.09.28更新
中年に多い膝関節のトラブル半月板断裂であるが、意外な結果が出た。X線検査で変形性関節症の所見がない変性半月板断裂の中年患者140例を対象に、監視下での運動療法と関節鏡下半月板部分切除術に対する優越性を無作為化比較試験で検証した。追跡2年時の膝関節損傷と変形性関節症転帰スコア(KOOS4)の変化に2群間で臨床的意義のある差はなかった(0.9ポイント、95% CI, -4.3 - 6.1;P=0.72)。3カ月時の大腿筋力は運動群で改善した(P≦0.004)。つまり、手術しなくとも、運動療法で十分回復することが判明した。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2016.09.24更新
第16回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(部会長:岡部信彦・川崎市健康安全研究所長)で部会員と厚生労働省は、一部で不足が起きている麻疹風疹混合(MR)ワクチンを、小児の定期接種に最優先で配分していくよう関係者に働きかけていくことで一致した。当日予定されていた議題ではなかったが、一部の小児科でMRワクチンの定期接種の受付中止などが相次いでおり、部会長からコメント取りまとめが提案された。関西空港をはじめとする関西地方を中心とする麻疹集団発生に伴い、感染者発生で緊急接種が必要となる地域以外の一部機関で、MRワクチンが通常以上に発注されたといったことなどが原因で、地域によりワクチンの在庫に偏在が生じているというのが現状である。当院にも接種希望者の問い合わせが多くあるが、現実的にはMRワクチンの入手は困難である。やはり、品薄が現実であるため、小児定期接種を優先的にすることで合意形成されつつあるので、成人の希望者にはご理解を賜りたい。先ずは、抗体価の測定および母子手帳の記録の確認をお願いしたい。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2016.09.21更新
関節リウマチ(RA)や膠原病の関節痛や神経痛に、リリカが頻用される傾向にある。しかし、リリカはガバペンに近い構造、改良されたとの触れ込みだが、実は抗てんかん薬なのである。当然、眠気、目眩、健忘等々の諸症状に注意を払わねばならないはずだ。この点を十分に説明しないで、安易に処方されているような印象がある。とりわけ線維筋痛症には頻用されるが、パロキセチンとの併用では健忘が強く出る。
抗てんかん薬に近い薬剤という認識を熟知して欲しい。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2016.09.14更新
低エネルギー外傷による手首(遠位橈骨)骨折歴を有する高齢者はそうでない場合に比べ平衡機能が悪化しており、将来の外傷リスクが高まっているとの研究結果が明らかになった。。今回の検討では過去6-24カ月以内に手首骨折の既往を有する、受傷時点で65歳以上の23例と年齢、性をマッチさせた骨折歴のない23例の平衡機能などを比較した。手首骨折群にはほかに重大な外傷イベントのない、転倒による低エネルギー損傷の患者がエントリーされ、脳卒中やてんかん、めまいなどの平衡機能障害を生ずる基礎疾患のある人は除外された。
検討の結果、手首骨折既往のない群では動的動作解析(dynamic motion analysis: DMA)スコアは790ポイントであったのに対し、手首骨折の既往を有する群では平衡機能の悪化(平均-933ポイント)が見られた。手首骨折群の83%(19例)は過去5年に骨粗鬆症検診(DXA法)を受けていたが、その間に理学療法として平衡機能訓練が行われていた割合は9%(2例)のみだった。
今回の検討から、高齢者の低エネルギー外傷に伴う手首骨折の既往は、平衡機能障害の検索や治療により、そのあとの大腿骨や椎体骨折を予防する必要があると認識すべきと述べている。
高齢者のエネルギー摂取は重要である。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2016.06.01更新
いろいろと論議があった新専門医制度であるが、ここにきて本格実施はみ送られることになった。厚生労働省は、社会保障審議会医療部会「専門医養成の在り方に関する専門委員会」(委員長:永井良三・自治医科大学学長)の5月30日の第3回会議で、新専門医制度は予定通りスタートせず、2017年度は"試行"で実施することを提案した。専門医養成の研修プログラムは、学会が実質的に認定するほか、本専門委員会が、専攻医数の激変や偏在を防ぐため、診療領域別、都道府県別、プログラム別の専攻医定員を設定する内容となった。なかなか足並みは揃わなかったようだ。いずれにおいても、日本専門医機構の役割は限定的なものに落ち着いた。"試行"を進めつつ、同機構の体制や、2018年度以降の専門医養成の在り方については、本専門委員会で引き続き議論することで、一応の落着は見た。しかし、そもそも専門医制度の改変のみで、医師の偏在を是正できるという蒙昧が致命的である。地方の周辺システムがワークしていない現状、学会の協力体制も不透明な状況で、全面施行は混乱を来すこと必定である。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2016.04.27更新
私たちは、かねて懸案の生物学的製剤(以下バイオ)を、できるだけ中止する方向で診療している。製薬会社に魂を売った、バイオスターと言われる、S業偉大のT中先生、KO大学T内先生、尾張大学I先生など、サイエンスをどのように考えれらているのか全く理解できない。私は先般横浜市で開催された第60回日本リウマチ学会総会にて、下記のような演題をワークショップで発表した。
目的:RAに対する生物学的製剤(以下バイオ製剤)は、最近有効な治療法として流布されているが、医療費の圧縮は国是であり、バイオ製剤の中止寛解は重要事項である。
方法:バイオ製剤治療を最低1年継続していて、中止してBoolean解を維持している14例をバイオ中止寛解群(以下寛解群)として、寛解群と年齢・性別・罹病期間・クラス・ステージ・DAS-28(ESR)・TSS・合併症などの背景因子が有意差のないRA10例を対照群とした。両者の臨床的特徴やサイトカインプロファイルを比較検証してみた。バイオ製剤の内訳は、TNFα阻害剤が8例で、T細胞副刺激阻害剤が2例であった。
結果:寛解群は対照群に比して、有意差をもって、握力が強く、好酸球性副鼻腔炎の合併があり、抗CCP抗体低値、血清IL-10高値、血清IL-22低値であった。
結論:バイオ製剤は有効性が高いものの、経済的負担が大きいので、中止可能な症例を予知できるマーカーが必要であるため、今後も症例を蓄積して検証を続けたい。
これに対して、多くの貴重なコメントを頂いたが、他の演題は大学などの立派な施設からの発表であったが、なんら新知見はなかった。
まともに診療していないと、こんなことになるんだろうと痛感した。
バイオを離脱したいRA患者さんは是非相談にいらして欲しいです。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2016.04.19更新
懸案の厚生労働省の社会保障審議会医療部会(部会長:永井良三・自治医科大学学長)は4月6日の会議で、2017年度から開始する新専門医制度について議論した。前回の同部会に続き、「延期ありきではないが、地域医療への影響についての懸念が払拭できない」といった意見が出たほか、日本専門医機構のガバナンスに問題があるとされ、サブスペシャルティの議論もなされていないなど、制度の根本に関わる問題の指摘も相次いだ。
厚労省は、医療部会の下に設置された「専門医養成の在り方に関する専門委員会」の議論を踏まえ、「延長ありきで進めてしまっては、できるものもできなくなってしまう。できる範囲内での調整をさせてもらっている」と、地域医療への影響についての懸念を払拭するため、都道府県に対し、関係者と連携し、検証、調整などを行うよう求める通知を出したことを説明。これに対して、制度の基盤となる機構のガバナンスを議論しなければ始まらないとし、「議論の順番が違う」「サブスペシャルティの在り方を決めていないのに、見切り発射するのは問題」などの意見も出た。そもそも実行は難しい。
新専門医制度をめぐっては、前回の2月の社保審医療部会で、医師の地域や診療科による偏在が生じるなど、地域医療への影響を懸念する声が相次ぎ、この3月に「専門医養成の在り方に関する専門委員会」が設置された経緯がある(新専門医制度、「調整の労は取る」と厚労省』を参照)。
まず口火切り、異議を唱えたのが、日本医師会副会長の中川俊男氏。「前回の医療部会で、多数の懸念が指摘された。根本的に見直し、日本専門医機構のガバナンスから見直すべきとの意見が多かったため、専門委員会を設置し、検討することになった」と指摘した。
しかし、厚労省が3月31日付で都道府県に対して出した通知は、2017年度からの開始を前提に、各都道府県に対し、地域医療の確保の点から関係者が必要な調整を行うよう内容であることから、「来年度からの実施ありきではないか」と問題視した。「延期ありきではないが、地域医療に影響する懸念を払拭できないなら、延期もやむを得ないと思っている。通知は医療部会の議論を無視している」(中川氏)。厚労省医政局医事課長の渡邊真俊氏は、研修プログラムの審査も進んでいる現状から、「延長ありきで進めてしまっては、できるものもできなくなってしまう。できる範囲内での調整をさせてもらっている」と説明。しかし、日本専門医機構や都道府県が取り組む対応策は、「検討」「調整」の段階であるため、中川氏は「今秋以降、専攻医の募集が始まる。このスケジュールで、本当に問題が解決できるのか。『できるものも、できなくなる』というのは全くおかしな発言」と語気を務めた。
日本医療法人協会会長の加納繁照氏も、大阪府では関係者が調整を行う協議の場はまだ設置されておらず、検討の遅れを指摘。全日本病院協会会長の西澤寛俊氏も、専門委員会に参加した立場から、「来年4月から開始するためのスケジュールに見える」とし、「議論の順序が逆。(日本専門医機構の)組織に問題がある。その組織で決まったことを前提に進めることは問題ではないか。より大きいのは、ガバナンスの在り方だが、(第1回の)専門委員会で全く議論されていなかった」と振り返った。全国知事会(奈良県知事)の荒井正吾氏からは、地域で関係者が協議する場を設けても、調整をするのは難しいとする声が上がった。「専門医の養成は、大学などで行われることが多いが、大学は協議の場に加わることが少なく、なかなか協力してもらえない。一言で言えば、『言うことを聞いてくれない』」(荒井氏)。
専門委員会の座長も務める永井部会長は、第1回の専門委員会は、まず実態を把握するために、関係者の説明を聞く目的だったと説明。その上で、「専門医を養成するのは、研修プログラムではなく、(それを基に研修を行う)地域。募集定員が研修希望者数の1.2倍を上回れば、(医師の偏在が進む可能性があり)大変なことになる。まず研修希望を聞き、専門医養成の枠組みを整理する必要がある」と述べ、医師の地域や診療科の偏在が進まない制度の在り方を検討する必要性を指摘。ガバナンスの在り方については、それと並行して議論していくとした。日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長の木戸道子氏からは、新専門医制度は、新規に専門医を取得する医師だけでなく、既取得者の更新も対象であり、医師全体に関わってくる問題であるという理由から、「現在専門医を取得している人が、どの程度更新するのか、きちんとシュミレーションしてから検討するべき」との提案も出た。
これを受けて、日本内科学会を新研修医制度について説明会があった。しかし、パネラーのプレゼンは画餅であった。理想論は良いが、現場を見ずして机上の空論は、壁壁とした。新専門医制度のみで、医師の偏在を是正できるという盲信が大問題である。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2016.03.28更新
新専門医制度が本当に機能するのかが懸念されている。そもそも地方の過疎化を国策を持って止められ無い状況で、医師の偏在を新専門医制度のみで是正しようとしているところに根本的問題がある。厚生労働省の社会保障審議会医療部会「専門医養成の在り方に関する専門委員会」の第1回会議が3月25日に開催された。2月18日に開催された医療部会で、地域医療に支障を来す懸念など新専門医制度をめぐり議論が噴出したため、その議論を深めるのが狙い。委員長には、医療部会部会長の永井良三氏(自治医科大学学長)が就任した。しかし前途多難であろう。 厚労省が提示したのは、「専門研修プログラム認定までの調整方針(案)」。予定通り2017年度開始を前提としたスケジュールを踏まえ、医師の地域偏在が今以上に進むことがないよう、地域医療への影響を検証しつつ、専攻医の募集人数の調整などをまずは行う内容だ。日本専門医機構、都道府県、厚労省の三者が取り組むべき課題を実施時期別に整理している。厚労省は、都道府県に対しては、今年1月15日付の通知で、関係者による専門医制度に関する「協議会」の設置を求めており、さらに周知徹底を図るため、近いうちに通知を再度出す予定とのこおtである。
厚労省や都道府県が調整役を担うことに対しては異論は出なかったが、「協議会」を設置しても果たして機能するのかなど、実効性を疑問視する声が挙がった。あまりにも机上の空論であるからである。
もっとも、今、議論になっているのは新専門医制度と医師の地域偏在との関連だが、日本専門医機構のガバナンスを問題視する意見やゼロベースでの検討など、根本的な議論を求める声も根強かった。ただ、医療部会では、2017年度開始予定の新専門医制度について、「延期すべき」との意見も出ていたが、「延期ありき」一辺倒の展開にはならなかったが、実際は延期せざるをえないであろう。混乱を招く制度改変は厳に慎むべきであろう。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック