2014.04.26更新
関節リウマチ(RA)治療に対して生物学的製剤が広く用いられるようになり、有用性が確認されている一方、有害事象として感染症が報告されており、特に結核の発症には注意する必要がある。そこで、倉敷成人病センター リウマチ膠原病センターの吉永泰彦氏らは、日本人RA患者における結核の標準化罹病率の10年間の推移と生物学的製剤の影響を検討した。吉永氏は、RA患者の結核罹病率に、生物学的製剤投与による増加は認められなかったと解説した。
対象となったのは、国立病院機構免疫異常ネットワークを中心とした全国規模リウマチ性疾患データベース(NinJa)に登録されたRA患者6万7,104人。日本結核予防会が作成した年齢階級別罹患率より、結核の標準化罹病率(standardized incident ratio;SIR=実測罹患数/期待罹患数)を算出し、前向きに、2年毎10年間の推移を検討した。
10年間の追跡期間中、51人に結核が発症し、SIRは3.48(95%CI 2.53-4.44)だった。
2年毎のSIRの推移を見ると、2003-04年度は3.81、2005-06年度は3.72、2007-08年度は4.76、2009-10年度は2.09、2011-12年度は1.27と、2007-08年度をピークに、その後低下傾向を示した。
結核を発症した51人(男性15人、女性36人)の平均年齢は65.0歳、RA平均罹病期間は11.3年で、肺外結核が21.6%に認められた。
生物学的製剤投与の有無別に、10年間のSIRを見ると、生物学的製剤投与患者は2.64(95%CI 0.33-4.95)、非投与患者は3.69(2.63-4.74)と、生物学的製剤を投与している患者の方が、結核のSIRが低かった。
これらの結果より、吉永氏は「RA患者の結核罹病率は、2007-08年度をピークに低下傾向を示し、生物学的製剤投与による増加は認められなかった」と解説し、「この理由として、生物学的製剤の導入にあたり、ガイドラインに従って結核のスクリーニングや化学予防などが適切に施行されていることが考えられる」と考察を述べた。
胸部:Xpやクオンティフェロンのチェックがのぞまれる。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2014.04.26更新
「関節リウマチ(RA)治療ガイドライン2014」が2014年7月に公開予定である。公開に先立ち、厚生労働研究班によるガイドライン案が4月24日のワークショップで発表された。慶應義塾大学医学部リウマチ内科の金子祐子氏は、「DMARDs」を担当し、その概要を報告した。金子氏は、MTX以外のcsDMARDsに関するエビデンスは十分ではなかったと限界を示しながらも、ブシラミンなど日本特有のDMARDsを含む薬剤を検証したクリニカルクエスチョンについて解説した。
「DMARDs」カテゴリーは、メトトレキサート以外のcsDMARDs(conventional synthetic DMARDs;従来型合成DMARDs)を対象としたClinical Question(以下、CQ)で構成される。それぞれのCQに対する推奨文には、推奨の強さと5点満点で評価した同意度が併記された。
最初のCQは、「関節リウマチに対して、金製剤使用は、非使用に比して有用か」だ。
金子氏は、関節リウマチ患者における注射金製剤は、臨床試験において、疾患活動性改善、画像的関節破壊抑制効果に有効性が認められ、安全性の面でも有害性は高くなかったが、いずれの臨床試験も、現在の基準に照らした標準的評価はされていないと解説し、「関節リウマチ患者の治療選択肢として注射金製剤を推奨する(推奨:弱い、同意度4.26)」とする推奨文を示した。
また、「関節リウマチに対して、サラゾスルファピリジンの投与は、非投与に比して有用か」とするCQに対しては、「関節リウマチ患者の疾患活動性改善を目的としてのサラゾスルファピリジン投与を推奨する(推奨:強い、同意度4.50)」とする推奨文が提示された。
これについて同氏は、日本におけるサラゾスルファピリジン1000mg投与のエビデンスは十分ではないものの、欧米のエビデンスは豊富であり、臨床症状改善および画像的関節破壊抑制効果において有効性が認められているために、強い推奨としたと解説した。
関節リウマチに対して、レフルノミド投与は、非投与に比して有用か」とするCQに対して、同氏は、レフルノミドは、欧米を中心とした質の高いRCT、CCTにより有効性のエビデンスが蓄積されているが、日本の市販後調査では、間質性肺炎の出現や死亡が認められているために、推奨度は条件付きの弱い推奨としたと解説した。したがって、推奨文は「関節リウマチ患者の疾患活動性改善を目的としてのレフルノミド投与を推奨する。ただし日本人における副作用発現のリスクを十分に勘案し、慎重に投与する(推奨:弱い、同意度4.26)」となっている。
最後に、同氏は、本ガイドラインでは、欧州リウマチ学会(EULAR)ガイドライン2013年版では推奨から除外された金製剤を弱い推奨として残し、また、日本特有のDMARDsとして、ブシラミン、タクロリムス、イグラモチドを加えたことが特徴であると解説し、今後は日本人におけるエビデンスの構築が求められると展望を述べた。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック
2014.04.26更新
「関節リウマチ(RA)治療ガイドライン2014」が2014年7月に公開予定です。公開に先立ち、厚生労働研究班によるガイドライン案が4月24日のワークショップで発表された。京都府立医科大学大学院医学研究科・免疫内科学の川人豊氏は、「MTX(メトトレキサート)」を担当し、その概要を報告した。川人氏は、8つのクリニカルクエスチョンに対する5つの推奨文を提示し、MTXや葉酸の有用性についてエビデンスレベルとともに解説。また、問題点として、日本人におけるMTXの適切な増量法や投与回数などのエビデンスが不足している現状に触れ、今後の検証が期待されると展望を述べた。
「MTX」カテゴリーは、8つのClinical Question(以下、CQ)に対する5つの推奨文で構成され、それぞれの推奨文には、推奨の強さと5点満点で評価した同意度が併記された。
最初のCQは、「MTX以外のcsDMARDs(conventional synthetic DMARDs;従来型合成DMARDs)不応関節リウマチ患者で、MTX投与は投与しなかった患者に比較して疾患活動性を抑制するのか」である。
川人氏は、コクランレビューにおいては、1997年にすでにMTXの有効性が示されており、現在までにそのエビデンスに変わりはないと解説し、「MTX以外のcsDMARDs不応関節リウマチ患者にはMTXの投与を推奨する(推奨:強い、同意度5.00)」とする推奨文を示した。
日常臨床におけるMTXの投与法は、医師により様々で、エビデンスが求められているが、「関節リウマチ患者で、MTX 1回投与は複数回投与に比較して有用性が高いか」とするCQについては、「MTX 1回投与も分割投与もいずれも推奨する(推奨:弱い、同意度4.39)」が提示された。
同氏は、MTXの投与法の有用性に関するエビデンスが少ないため十分には言えないが、現時点では投与法の違いによる効果や副作用に有意な差はなく、弱い推奨とした。今後、日本人におけるエビデンスを確立していく必要があると解説した。
さらに、葉酸使用に関するCQも取り上げられた。
「関節リウマチ患者で、MTX内服時の葉酸・活性型葉酸の投与は、MTXの副作用/治療効果を減弱させるか」とするCQについて、同氏は、1週間で7mg以下の低用量の葉酸の併用により、MTXの有効性は減弱されず、MTXの副作用である肝障害や消化管障害の抑制効果は認められるが、血球減少の予防効果におけるエビデンスは十分ではなかったと解説した。したがって、推奨文は「MTX投与時には葉酸併用を推奨する(推奨:弱い、同意度4.89)」となっている。
最後のCQは、「周術期にMTXの休薬は必要か」だ。
このCQに対し、同氏は、MTXを内服継続することで、感染や創傷治癒遅延は増加しないが、出血量が多い手術では休薬も考慮する必要があると解説し、「周術期にMTXを休薬することは推奨しない(推奨:弱い、同意度4.78)」とする推奨文を示した。
いずれも論議のあったポイントであったが、参考になるコメントが多かった。
投稿者: 石田内科リウマチ科クリニック